。いま評判なのア、お滝におつま……」
「女を知りてえんじゃねえ。ゆうべ五ツ頃から、今日の明け方までに、どんな客が上がったか、そいつを調べて来るんだ。こっちの目当ては、鴎硯《おうせき》という茶坊主だが、まだ外に、拾いものがあるかも知れねえからな」
「へい。ですが、茶坊主が、なんであすこへ行きやすんで?……」
「ゆうべ伊吹屋《いぶきや》からの帰りに、源兵衛が如才なく、二分や一両は、握らしたに違えねえ。坊主の住居は、浜松町だそうだから、丁度都合のいい足溜《あしだ》まりだ。しけ込んだ上で、何を企《たくら》むか知れねえって奴だ」
「成程」
「伊吹屋へ上がり込んで、みんなの機嫌《きげん》を取るような坊主だ。お城から、誰に何を云いつかって来てるか、知れたもんじゃねえから、抜かっちゃならねえぜ」
「ようござんす。きっと何か、土産《みやげ》を掴《つか》んでめえりやす」
「おいらはこれから、一軒寄って黒門町へ帰ってる。おめえの方の様子を知ってからでねえと、仕事の順序が立たねえから、ちっとも速く頼むぜ」
「おっと合点。親分も、お気をつけて行っておくんなせえ」
土けむりをあげて、駈け出した竹造を見送ると、伝
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