返した。
「あの廊下は、姉さんの寝ている離れから、台所まで行くようになって居ります。その途中から、常どんが小僧達と一緒に寝ている部屋へ、曲がるようになって居りますので、その時は、何とも思ってはおりませんでしたけど、あれは姉さんの所へ、行った帰りだと思います」
「そうか。……他に何か今度のことについて、気のついたことはねえか」
「ございません」
「よし。じゃアお前さんは、あっちへ行って、小僧達を呼んで来ねえ」
「はい」
重苦しい空気が、一同の前に流れた。
「常吉に限って……」
「でも、……そう云えば、お由利のことというと、夢中になる方ですからね。きのうだって、自分一人で迎えに行くなんて、云ってたじゃござんせんか」
源兵衛がお春の言葉を耳に掛けない様子に、お牧は同調しなかった。
「小僧達を、連れてまいりました」
「………」
お春の後ろへすわった小僧達は、互いに顔を見合わせて、おどおどと落ち着かなかった。
「おい。お前達は、ゆうべ寝てから、常吉が部屋から外へ出て行ったのに、気がついていただろう」
「………」
松三郎が困って民吉を見ると、民吉はにらむようにそれを見返したが、やがて留五郎
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