て、まことによく働いてくれますので……」
常吉は頭を赤らめて、両手をついたが、常々それと決めていて、何の感じもないのか、お春は姉の方を見つめたまま、顔色も変えなかった。
後は田舎から出て来て間もないような、小僧の民吉と松三郎。これには留五郎も伝七も、眼をひかれた様子はなかった。
「手前共は、地味《じみ》な商売でございまして、わたくしがまだおもに働いて居りますところから、これくらいの人数で、十分やっていけますので。……台所をやらせて居りますのが、一番末に座って居ります、下女のおみねでございます。十八になりますが、一昨年、房州《ぼうしゅう》から雇い入れました、正直者でございます」
きまり悪げに、眼を伏せているおみねは、女中のこととて、地味な身なりはしているが、肩も丸味を帯び、胸元も高く、ときどき留五郎の方を見る顔には、何となく色気があって、一応男の眼をひく女であった。
「いや、よく判った。こうしてみんなに並んでもらったので、調べも大層楽に出来るというもんだ。どうだな、この中にいるだれかはゆうべ一同が寝静まってから、お由利さんの部屋へ、這入って行った者のあるのを、知ってるに違いねえんだ
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