お仕え申して居ります、表使《おもてつかい》のお方とやらで、三十くらいの袖《そで》ノ|井《い》様と申すお女中衆と、鴎硯《おうせき》と申されるお坊主衆とが一しょでございました」
「その二人は、何だって来なすったんだ?」
「袖ノ井様は、百人町にお家があり、お由利とは、大層仲よくして頂いて居りましたそうで、同じように宿退《やどさが》りのお許しが出ましたのを幸い、送って行って上げようと、お立ち寄り下さいましたのでございます。……お坊主の鴎硯《おうせき》様は、お光の方様のお声掛かりで、途中を護って下さいましたので。……」
「それで、二人は、座敷へ上がったのかね」
「左様でございます。手前共でも膳の用意なども、いたして居りましたので、お二方を上席に、お由利と平太郎が並びまして、一口召し上がって頂きました」
「平太郎と云うと?……」
「同じ町内の結城屋《ゆうきや》のせがれで、お由利がお城を退りましたら、一緒にする約束になって居ります。――昨夜も呼び迎えて居りました」
「そんなら、その時にゃ、別に変わったことは、なかったんだな」
「それはもう、みんな楽しそうで、鴎硯様は、唄や手踊《ておど》りが、大層お上
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