お》しだて。――人間《にんげん》は、四百四|病《びょう》の器《うつわ》だというが、重《しげ》さん、おめえの病《やまい》は、別《べつ》あつらえかも知《し》れねえの」
春重《はるしげ》は、きょろりとあたりを見廻《みまわ》してから、一|段《だん》声《こえ》を落《おと》した。
「ちょいと家《うち》へ寄《よ》らねえか。おもしろい物《もの》を見《み》せるぜ」
「折角《せっかく》だが、寄《よ》ってる暇《ひま》がねえやつさ。これから大急《おおいそぎ》ぎで、おせんの見世《みせ》まで行《い》かざァならねえんだ」
「おせんの見世《みせ》へ行《い》くッて、何《な》んの用《よう》でよ」
「何《な》んの用《よう》だか知《し》らねえが、春信師匠《はるのぶししょう》が、急《きゅう》に用《よう》ありとのことでの」
八五|郎《ろう》は、春信《はるのぶ》から預《あずか》った結文《むすびふみ》を、ちょいと懐中《ふところ》から窺《のぞ》かせた。
紅《べに》
一
ゆく末《すえ》は誰《だれ》が肌《はだ》触《ふ》れん紅《べに》の花《はな》 ばせを
「おッとッと、そう一人《ひとり》で急《いそ》いじゃいけねえ
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