若《わけ》え者《もの》がひとり言《ごと》をいってるなんざ、みっともねえじゃねえか」
坊主頭《ぼうずあたま》へ四つにたたんだ手拭《てぬぐい》を載《の》せて、朝《あさ》の陽差《ひざし》を避《さ》けながら、高々《たかだか》と尻《しり》を絡《から》げたいでたちの相手《あいて》は、同《おな》じ春信《はるのぶ》の摺師《すりし》をしている八五|郎《ろう》だった。
「みっともねえかも知《し》れねえが、あれ程《ほど》たァ思《おも》わなかったからよ」
「何《なに》がよ」
「春重《はるしげ》だ」
「春重《はるしげ》がどうしたッてんだ」
「どうもこうもねえが、あいつァおめえ、日本《にほん》一の変《かわ》り者《もの》だぜ」
「春重《はるしげ》の変《かわ》り者《もの》だってこたァ、いつも師匠《ししょう》がいってるじゃねえか。今《いま》さら変《かわ》り者《もの》ぐれえに、驚《おどろ》くおめえでもなかろうによ」
「うんにゃ、そうでねえ。ただの変《かわ》り者《もの》なら、おいらもこうまじゃ驚《おどろ》かねえが、一|晩中《ばんじゅう》寝《ね》ずに爪《つめ》を煮《に》たり、束《たば》にしてある女《おんな》の髪《かみ》の毛
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