まも》った。
「変《かわ》り者《もの》じゃァねえ。そういうおめえの方《ほう》が、変《かわ》ってるんだ。――四|角《かく》四|面《めん》にかしこまっているお武家《ぶけ》でも、男《おとこ》と生《うま》れたからにゃ、女《おんな》の嫌《きら》いな者《もの》ッ、ただの一人《ひとり》もありゃァしめえ。その万人《まんにん》が万人《まんにん》、好《す》きで好《す》きでたまらねえ女《おんな》の、これが本当《ほんとう》の匂《におい》だろうじゃねえか。成《な》る程《ほど》、肌《はだ》の匂《におい》もある。髪《かみ》の匂《におい》もある。乳《ちち》の匂《におい》もあるにァ違《ちげ》えねえ。だが、その数《かず》ある女《おんな》の匂《におい》を、一つにまとめた有難味《ありがたみ》の籠《こも》ったのが、この匂《におい》なんだ。――三|浦屋《うらや》の高尾《たかお》がどれほど綺麗《きれい》だろうが、楊枝見世《ようじみせ》のお藤《ふじ》がどんなに評判《ひょうばん》だろうが、とどのつまりは、みめかたちよりは、女《おんな》の匂《におい》に酔《よ》って客《きゃく》が通《かよ》うという寸法《すんぽう》じゃねえか。――よく聞《き
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