名《な》を呼《よ》びながら、今《いま》はもはや堪《た》えられない歩《あゆ》みを、いずくへとのあてもなしに、無理《むり》から先《さき》へ先《さき》へと運《はこ》んでいた。
「――浜村屋《はまむらや》、待《ま》ちや。わらわを置《お》いて、そなたばかりがどこへ行《ゆ》く。――そりゃ聞《き》こえぬぞ。わらわも一|緒《しょ》じゃ。そなたの行《ゆ》きやるところなら、地獄《じごく》の極《はて》へなりと、いといはせぬ。連《つ》れて行《ゆ》きゃ。速《はよ》う連《つ》れて行《ゆ》きゃ」
二十一で坂部壱岐守《さかべいきのかみ》へ嫁《とつ》いで八|年目《ねんめ》に戻《もど》って来《き》た。既《すで》に三十の身《み》ではあったが、十四五の頃《ころ》から早《はや》くも本多小町《ほんだこまち》と謳《うた》われたお蓮《れん》は、まだ漸《ようやく》く二十四五にしか見《み》えず、いずれかといえば妖艶《ようえん》なかたちの、情熱《じょうねつ》に燃《も》えた眼《め》を据《す》えて、夕闇《ゆうやみ》の中《なか》を音《おと》もなく歩《ある》いてゆく様《さま》は、ぞッとする程《ほど》凄《すご》かった。
八
いずこの
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