》てくれた」
「太夫《たゆう》さん」
「太夫《たゆう》さんなぞと呼《よ》ばずに、やっぱり昔《むかし》の通《とおり》り、吉《きち》ちゃんと呼《よ》んでおくれな」
「そんなら、吉《きち》ちゃん。――」
「はい」
「あたしゃ、会《あ》いとうござんした」
「あたしも会《あ》いたかった。――こういったら、お前《まえ》さんはさだめし、心《こころ》にもないことをいうと、お想《おも》いだろうが、決して嘘《うそ》でもなけりゃ、お世辞《せじ》でもない。――知《し》っての通《とお》り、あたしゃどうやら人気《にんき》も出《で》て、世間様《せけんさま》からなんのかのと、いわれているけれど、心《こころ》はやっぱり十|年前《ねんまえ》もおなじこと。義理《ぎり》でもらった女房《にょうぼう》より、浮気《うわき》でかこった女《おんな》より、心《しん》から思《おも》うのはお前《まえ》の身《み》の上《うえ》。暑《あつ》いにつけ、寒《さむ》いにつけ、切《せつ》ない思《おも》いは、いつも谷中《やなか》の空《そら》に通《かよ》ってはいたが、今《いま》ではお前《まえ》も人気娘《にんきむすめ》、うっかりあたしが訪《たず》ねたら、あらぬ
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