ま》まで辛抱《しんぼう》に辛抱《しんぼう》を重《かさ》ねていた眼《め》からは、玉《たま》のような涙《なみだ》が、頬《ほほ》を伝《つたわ》って溢《あふ》れ落《お》ちた。
やがて、香煙《こうえん》を揺《ゆる》がせて、恐《おそ》る恐《おそ》る襖《ふすま》の間《あいだ》から首《くび》を差出《さしだ》したのは、弟子《でし》の菊彌《きくや》だった。
「お客様《きゃくさま》でございます」
「どなたが」
「谷中《やなか》のおせん様《さま》」
「えッ、あの笠森《かさもり》の。……」
「はい」
「太夫《たゆう》は御病気《ごびょうき》ゆえ、お目《め》にかかれぬと、お断《ことわ》りしておくれ」
するとその刹那《せつな》、ぱっと眼《め》を開《あ》いて菊之丞《きくのじょう》の、細《ほそ》い声《こえ》が鋭《するど》く聞《きこ》えた。
「いいよ。いいから、ここへお通《とお》し。――」
六
初霜《はつしも》を避《さ》けて、昨夜《さくや》縁《えん》に上《あ》げられた白菊《しらぎく》であろう、下葉《したは》から次第《しだい》に枯《か》れてゆく花《はな》の周囲《しゅうい》を、静《しず》かに舞《ま》っている一
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