ようござる。及《およ》ばずながら愚老《ぐろう》が看護《かんご》して居《い》る以上《いじょう》、手落《ておち》はいたさぬ考《かんが》えじゃ」
「何分共《なにぶんとも》にお願《ねが》い申上《もうしあ》げます」
一|同《どう》は足音《あしおと》を忍《しの》ばせて、襖《ふすま》の開《あ》けたてにも気《き》を配《くば》りながら、次《つぎ》の間《ま》へ出《で》て行《い》った。
暫《しば》し、鉄瓶《てつびん》のたぎる音《おと》のみが、部屋《へや》のしじまに明《あか》るく残《のこ》された。
「御内儀《ごないぎ》」
玄庵《げんあん》の声《こえ》は、低《ひく》く重《おも》かった。
「はい」
「お気《き》の毒《どく》でござるが、太夫《たゆう》はもはや、一|時《とき》の命《いのち》じゃ」
「えッ」
「いや静《しず》かに。――ただ今《いま》、脈《みゃく》に力《ちから》が出《で》たようじゃと申上《もうしあ》げたが、実《じつ》は他《た》の方々《かたがた》の手前《てまえ》をかねたまでのこと。心臓《しんぞう》も、微《かす》かに温《ぬく》みを保《たも》っているだけのことじゃ」
「それではもはや」
おむらの、今《い
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