、ふと、夏《なつ》の軒端《のきば》につり残《のこ》されていた風鈴《ふうりん》の音《おと》に、重《おも》い眼《め》を開《あ》けてあたりを見廻《みまわ》した。
医者《いしゃ》の玄庵《げんあん》をはじめ、妻《つま》のおむら、座元《ざもと》の羽左衛門《うざえもん》、三五|郎《ろう》、彦《ひこ》三|郎《ろう》、その他《た》の人達《ひとたち》が、ぐるりと枕許《まくらもと》に車座《くるまざ》になって、何《なに》かひそひそと語《かた》り合《あ》っている声《こえ》が、遠《とお》い国《くに》の出来事《できごと》のように聞《きこ》えていた。
「おお、あなた。――」
最初《さいしょ》におむらが、声《こえ》をかけた。が、菊之丞《きくのじょう》の心《こころ》には、声《こえ》の主《ぬし》が誰《だれ》であるのか、まだはっきり映《うつ》らなかったのであろう。きょろりと一|度《ど》見廻《みまわ》したきり、再《ふたた》び眼《め》を閉《と》じてしまった。
玄庵《げんあん》は徐《しず》かに手《て》を振《ふ》った。
「どなたもお静《しず》かに。――」
「はい」
急《きゅう》に水《みず》を打《う》ったような静《しず》けさに
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