が、ここから帰《かえ》る方《ほう》がいいようだの」
「なぜでございます」
「不吉《ふきつ》なことをいうようだが、浜村屋《はまむらや》さんはひょっとすると、あのままいけなくなるかも知《し》れないからの」
「ええ滅相《めっそう》な。左様《さよう》なことがおますかいな」
そういって眼《め》をみはったのは嵐《あらし》三五|郎《ろう》であった。
「いや、わたしとて、太夫《たゆう》に元《もと》のようになってもらいたいのは山々《やまやま》だが、今《いま》までの太夫《たゆう》の様子《ようす》では、どうも難《むず》かしかろうと思《おも》われる。縁起《えんぎ》でもないことだが、ゆうべわたしは、上下《じょうげ》の歯《は》が一|本《ぽん》残《のこ》らず、脱《ぬ》けてしまった夢《ゆめ》を見《み》ました。情《なさけ》ないが、所詮《しょせん》太夫《たゆう》は助《たす》かるまい」
羽左衛門《うざえもん》はそういって、寂《さび》しそうに眉《まゆ》をひそめた。
五
夢《ゆめ》から夢《ゆめ》を辿《たど》りながら、更《さら》に夢《ゆめ》の世界《せかい》をさ迷《まよ》い続《つづ》けていた菊之丞《はまむらや》は
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