よしちょうどお》りを左《ひだり》へ、おやじ橋《ばし》を渡《わた》って、牛《うし》の歩《あゆ》みよりもゆるやかに進《すす》んでいた。
 菊之丞《きくのじょう》の駕籠《かご》を一|町《ちょう》ばかり隔《へだ》てて、あたかも葬式《そうしき》でも送《おく》るように悵然《ちょうぜん》と首《くび》を垂《た》れたまま、一|足毎《あしごと》に重《おも》い歩《あゆ》みを続《つづ》けていたのは、市村座《いちむらざ》の座元《ざもと》羽左衛門《うざえもん》をはじめ、坂東《ばんどう》彦《ひこ》三|郎《ろう》、尾上《おのえ》菊《きく》五|郎《ろう》、嵐《あらし》三五|郎《ろう》、それに元服《げんぷく》したばかりの尾上松助《おのえまつすけ》などの一|行《こう》であった。
 いずれも編笠《あみがさ》で深《ふか》く顔《かお》を隠《かく》したまま、眼《め》をしばたたくのみで、互《たがい》に一|言《ごん》も発《はっ》しなかったが、急《きゅう》に何《なに》か思《おも》いだしたのであろう。羽左衛門《うざえもん》は、寂《さび》しく眉《まゆ》をひそめた。
「松助《まつすけ》さん」
「はい」
「お前《まえ》さんは、折角《せっかく》だ
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