おいてくんねえ。おいらの足《あし》でおいらが歩《ある》いてくんだ。どこへ行《い》こうが勝手《かって》じゃねえか」
「ほう、大《おお》まかに出《で》やァがったな。話《はなし》をしたなァおれなんだぜ。行《ゆ》くんなら、せめておれの髯《ひげ》だけでもあたッてッてくんねえ」
「髯《ひげ》は帰《けえ》って来《き》てからだ」
「帰《かえ》って来《き》てからじゃ、間《ま》に合《あ》わねえよ」
「間《ま》に合《あ》わなかったら、どこいでも行《い》って、やってもらって来《く》るがいいやな。――ええもう面倒臭《めんどうくせ》え、四の五のいってるうちに、日《ひ》が暮《く》れちまわァ」
 前つぼの固《かた》い草履《ぞうり》の先《さき》で砂《すな》を蹴《け》って、一|目散《もくさん》に駆《か》け出《だ》した伝吉《でんきち》は、提灯屋《ちょうちんや》の角《かど》まで来《く》ると、ふと立停《たちどま》って小首《こくび》を傾《かし》げた。
「待《ま》てよ。こいつァ市村座《いちむらざ》へ行《ゆ》くより先《さき》に、もっと大事《だいじ》なところがあるぜ。――そうだ。まだおせんちゃんが知《し》らねえかもしれねえ。こんな時《
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