んてざまなんだ。手間《てま》が惜《お》しさに見舞《みまい》にも行《ゆ》かねえしみッたれ野郎《やろう》だ、とそれこそ口《くち》をそろえて悪《わる》くいわれるなァ、加賀様《かがさま》の門《もん》よりもよく判《わか》ってるぜ。――つまらねえ理屈《りくつ》ァいわねえで、速《はや》く羽織《はおり》を着《き》せねえかい。こうなったり一|刻《こく》だって、待《ま》てしばしはねえんだ」
 お花《はな》の手《て》から羽織《はおり》を引《ひ》ッたくった伝吉《でんきち》は、背筋《せすじ》が二|寸《すん》も曲《ま》がったなりに引《ひ》ッかけると、もう一|度《ど》お花《はな》の手《て》を振《ふ》りもぎって、喧嘩犬《けんかいぬ》のように、夢中《むちゅう》で見世《みせ》を飛《と》び出《だ》した。
「待《ま》ちねえ、伝《でん》さん」
 長兵衛《ちょうべえ》は背後《うしろ》から声《こえ》をかけた。
「何《な》んの用《よう》だ」
「用《よう》じゃァねえが、おかみさんもああいうンだから、晩《ばん》にしたらどうだ。どうせいま行《い》ったって、会《あ》えるもんでもねえンだから。――」
「ふん、おめえまで、余計《よけい》なことは
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