下剃《したぞり》一人《ひとり》をおいて出《で》られたのでは、家業《かぎょう》に障《さわ》ると思《おも》ったのであろう。一|張羅《ちょうら》の羽織《はおり》を、渋々《しぶしぶ》箪笥《たんす》から出《だ》して来《き》たお花《はな》は、亭主《ていしゅ》の伝吉《でんきち》の袖《そで》をおさえて、無理《むり》にも引止《ひきと》めようと顔《かお》を窺《のぞ》き込《こ》んだ。
が、伝吉《でんきち》は、いきなり吐《は》きだすようにけんのみ[#「けんのみ」に傍点]を食《く》わせた。
「馬鹿野郎《ばかやろう》。何《なに》をいってやがるんだ。亭主《ていしゅ》のすることに、女《おんな》なんぞが口《くち》を出《だ》すこたァねえから黙《だま》って引《ひ》ッ込《こ》んでろ。外《ほか》のことならともかく、太夫《たゆう》が急病《きゅうびょう》だッてのを、そのままにしといたんじゃ、世間《せけん》の奴等《やつら》になんていわれると思《おも》うんだ。仮名床《かなどこ》の伝吉《でんきち》の奴《やつ》ァ、ふだん浜村屋《はまむらや》が好《す》きだの蜂《はち》の頭《あたま》だのと、口幅《くちはば》ッてえことをいってやがるくせに、な
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