《ひ》いたんだが、そりゃおめえ、ここでおれが話《はなし》をしてるようなもんじゃァねえ、芝居中《しばいじゅう》がひっくり返《かえ》るような大騒《おおさわ》ぎだ。――そのうちに頭取《とうどり》が駆《か》け着《つ》ける、弟子達《でしたち》が集《あつ》まるで、倒《たお》れた太夫《たゆう》を、鷺娘《さぎむすめ》の衣装《いしょう》のまま楽屋《がくや》へかつぎ込《こ》んじまったが、まだおめえ、宗庵先生《そうあんせんせい》のお許《ゆる》しが出《で》ねえから、太夫《たゆう》は楽屋《がくや》に寝《ね》かしたまま、家《うち》へも帰《けえ》れねえんだ」
「よし、お花《はな》、おいらに羽織《はおり》を出《だ》してくんねえ」
 伝吉《でんきち》は突然《とつぜん》こういって立上《たちあが》った。

    二

「お前《まえ》さん、どこへ行《ゆ》くんだよ。真《ま》ッ昼間《ぴるま》ッからお見世《みせ》を空《あ》けて出《で》て行《い》ったんじゃ、お客様《きゃくさま》に申訳《もうしわけ》がないじゃないか。太夫《たゆう》さんとこへお見舞《みまい》に行《ゆ》くなら、日《ひ》が暮《く》れてからにしとくれよ。――ようッてば」
 
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