うまや》で、好《す》きな勝負《しょうぶ》をしてでござんしょうが、文《ふみ》を御覧《ごらん》なすった若旦那《わかだんな》が、まッことあたしからのお願《ねが》いとお思《おも》いなされて、大枚《たいまい》のお宝《たから》をお貸《か》し下《くだ》さいましたら、これから先《さき》あたしゃ若旦那《わかだんな》から、どのような難題《なんだい》をいわれても、返《かえ》す言葉《ことば》がござんせぬ。――お師匠《ししょう》さん。何《なん》としたらよいものでござんしょう」
 まったく途方《とほう》に暮《く》れたのであろう。春信《はるのぶ》の顔《かお》を見《み》あげたおせんの瞼《まぶた》は、露《つゆ》を含《ふく》んだ花弁《かべん》のように潤《うる》んで見《み》えた。
「さァてのう」
 腕《うで》をこまねいて、あごを引《ひ》いた春信《はるのぶ》は、暫《しば》し己《おの》が膝《ひざ》の上《うえ》を見詰《みつ》めていたが、やがて徐《おもむろ》に首《くび》を振《ふ》った。
「徳《とく》さんも、人《ひと》の心《こころ》の読《よ》めない程《ほど》馬鹿《ばか》でもなかろう。どのような文句《もんく》を書《か》いた文《ふみ》か
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