》が徳《とく》さんとこで会《あ》って、どこへ行《い》ったかぐらいのこたァ、聞《き》かねえでも、ちゃんと判《わか》ってらァな」
「おやッ、行《い》った先《さき》が判《わか》ってるッて」
「その通《とお》りだ、当《あて》てやろうか」
「冗談《じょうだん》じゃねえ、いくらお前《まえ》さんの眼《め》が利《き》いたにしたって、こいつが判《わか》ってたまるもんか。断《ことわ》っとくが、当時《とうじ》十六|文《もん》の売女《やまねこ》なんざ、買《か》いに行《い》きゃァしねえよ」
「だが、あのざまは、あんまり威張《いば》れもしなかろう」
「あのざまたァ何《なに》よ」
「垣根《かきね》へもたれて、でんぐる返《かえ》しを打《う》ったざまだ」
「何《な》んだって」
「おせんの裸《はだか》を窺《のぞ》こうッてえのは、まず立派《りっぱ》な智恵《ちえ》だがの。おのれを忘《わす》れて乗出《のりだ》した挙句《あげく》、垣根《かきね》へ首《くび》を突《つ》っ込《こ》んだんじゃ、折角《せっかく》の趣向《しゅこう》も台《だい》なしだろうじゃねえか」
「そんなら重《しげ》さん、お前《まえ》さんはあの様子《ようす》を。――」

前へ 次へ
全263ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
邦枝 完二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング