せん より
若旦那《わかだんな》さま
ふみのおもては、ただこれだけだった。
三
朝《あさ》っぱらの柳湯《やなぎゆ》は、町内《ちょうない》の若《わか》い者《もの》と、楊枝削《ようじけず》りの御家人《ごけにん》と道楽者《どうらくもの》の朝帰《あさがえ》りとが、威勢《いせい》のよしあしを取《とり》まぜて、柘榴口《ざくろぐち》の内《うち》と外《そと》とにとぐろを巻《ま》いたひと時《とき》の、辱《はじ》も外聞《がいぶん》もない、手拭《てぬぐい》一|本《ぽん》の裸絵巻《はだかえまき》を展《ひろ》げていたが、こんな場合《ばあい》、誰《だれ》の口《くち》からも同《おな》じように吐《は》かれるのは、何吉《なにきち》がどこの賭場《とば》で勝《か》ったとか、どこそこのお何《なに》が、近頃《ちかごろ》誰《だれ》にのぼせているとか、さもなければ芝居《しばい》の噂《うわさ》、吉原《よしわら》の出来事《できごと》、観音様《かんのんさま》の茶屋女《ちゃやおんな》の身《み》の上《うえ》など、おそらく口《くち》を開《ひら》けば、一|様《よう》におのれの物知《ものし》りを、少《すこ》し
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