》はいらないから、いっとくれ。あたしでかなうことなら、どんな願《ねが》いでも、きっと聞《き》いてあげようから。……」
「そりゃどうも。おせんに聞《き》かしてやりましたら、どれ程《ほど》喜《よろこ》ぶか知《し》れやァしません。――ところで若旦那《わかだんな》」
「なにさ」
「そのお願《ねが》いと申《もう》しますのは」
「その頼《たの》みとは」
「お金《かね》を。――」
「何《な》んのことかと思《おも》ったら、お金《かね》かい。憚《はばか》りながら、あたしァ江戸《えど》でも人様《ひとさま》に知《し》られた、橘屋《たちばなや》の徳太郎《とくたろう》、おせんの頼《たの》みとあれば、決《けっ》していやとはいわないから、かまわずにいって御覧《ごらん》。たとえどれ程《ほど》の大金《たいきん》でも、あれのためなら、首《くび》は横《よこ》にゃ振《ふ》らないつもりだよ」
「へえへえ、どうも恐《おそれ》れいりやした。いやもう、おせん、おめえよく捕《と》ったぞ。これ程《ほど》の鼠《ねずみ》たァ、まさか思《おも》っちゃ。……」
「これ千|吉《きち》つぁん、何《なに》をおいいだ。あたしのことを鼠《ねずみ》とは。…
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