「お前《まえ》は道端《みちばた》じゃ見《み》せられないというから、わざわざ駕籠《かご》を急《いそ》がせて、ここまで来《き》たんだよ。さ大事《だいじ》な文《ふみ》を、少《すこ》しでも速《はや》く見《み》せてもらいましょう」
「お見《み》せいたしやす」
「口《くち》ばっかりでなく、速《はや》くお出《だ》しッたら」
「出《だ》しやす。――が、ちょいとお待《ま》ちなすっておくんなさい。その前《まえ》に、あっしゃァ若旦那《わかだんな》に、ひとつお願《ねが》い申《もう》してえことがござんすので。……」
「何《な》んだえ、あらたまって。――」
「実《じつ》ァその、おせんの奴《やつ》から。……」
「なに、おせんから、あたしに頼《たの》みとの」
「へえ」
「そんならなぜ、もっと早《はや》くいわないのさ」
「申上《もうしあ》げたいのは山々《やまやま》でござんすが、ちと厚《あつ》かましい筋《すじ》だもんでげすから、ついその、あっしの口《くち》からも、申上《もうしあ》げにくかったような訳《わけ》でげして」
「馬鹿《ばか》な。つまらない遠慮《えんりょ》なんか、水臭《みずくさ》いじゃないか。そんな遠慮《えんりょ
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