か》いたな始《はじ》めての、いわば初恋《はつこい》とでも申《もう》しやしょうか。はずかしい上《うえ》にもはずかしいのが人情《にんじょう》でげしょう。道《みち》ッ端《ぱた》で展《ひろ》げたとこを、ひょっと誰《だれ》かに見《み》られた日《ひ》にゃァ、それこそ若旦那《わかだんな》、気《き》の弱《よわ》いおせんは、どんなことになるか、知《し》れたもんじゃござんせん。野暮《やぼ》は承知《しょうち》の上《うえ》でござんす。どうか、ここンところをお察《さっ》しなすって……」
 谷中《やなか》から上野《うえの》へ抜《ぬ》ける、寛永寺《かんえいじ》の土塀《どべい》に沿《そ》った一|筋道《すじみち》、光琳《こうりん》の絵《え》のような桜《さくら》の若葉《わかば》が、道《みち》に敷《し》かれたまん中《なか》に佇《たたず》んだ、若旦那《わかだんな》徳太郎《とくたろう》とおせんの兄《あに》の千|吉《きち》とは、折《おり》からの夕陽《ゆうひ》を浴《あ》びて、色《いろ》よい返事《へんじ》を認《したた》めたおせんの文《ふみ》を、見《み》せろ見《み》せないのいさかいに、しばし心《こころ》を乱《みだ》していたが、この上《
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