《おどろ》く程《ほど》の高《たか》でもあるめえ」
「でも、そんなお金《かね》は。……」
「だからよ。初手《しょて》からいってる通《とお》り、おめえやお袋《ふくろ》の臍《へそ》くりから、引《ひ》っ張《ぱ》り出《だ》そうたァいやァしねえや。狙《ねら》いをつけたなあの若旦那《わかだんな》、橘屋《たちばなや》の徳太郎《とくたろう》というでくの棒《ぼう》よ。ふふふふ。何《な》んの雑作《ぞうさ》もありァしねえ。おめえがここでたった一言《ひとこと》。おなつかしゅうござんす、とかなんとかいってくれさえすりァ、おいらの頼《たの》みァ聴《き》いてもらえようッてんだ。お釈迦《しゃか》が甘茶《あまちゃ》で眼病《めやみ》を直《なお》すより、もっとわけねえ仕事《しごと》じゃねえか」
「それでもあたしゃ。心《こころ》にもないことをいって。……」
「そ、その料簡《りょうけん》がいけねえんだ。腹《はら》にあろうがなかろうが、武士《ぶし》は戦略《せんりゃく》、坊主《ぼうず》は方便《ほうべん》、時《とき》と場合《ばあい》じゃ、人《ひと》の寝首《ねくび》をかくことさえあろうじゃねえか。――さ、ここに筆《ふで》と紙《かみ》があ
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