ははっきり見極《みきわ》めることが出来《でき》なかった。
その方暗《かたやみ》の中《なか》に、おせんの声《こえ》は低くふるえた。
「兄《あに》さん」
「え」
「帰《かえ》っておくんなさい」
「何《な》んだって。おいらに帰《けえ》れッて」
「あい」
「冗談《じょうだん》じゃねえ。用《よう》がありゃこそ、わざわざやって来《き》たんだ。なんでこのまま帰《けえ》れるものか。そんなことよりおいらの頼《たの》みを、素直《すなお》にきいてもらおうじゃねえか。おめえさえ首《くび》を縦《たて》に振《ふ》ってくれりゃァ、からきし訳《わけ》はねえことなんだ。のうおせん。赤《あか》の他人《たにん》でさえ、事《こと》を分《わ》けて、かくかくの次第《しだい》と頼《たの》まれりゃ、いやとばかりゃァいえなかろう。おいらァおめえの兄貴《あにき》だよ。――血《ち》を分《わ》けた、たった一人《ひとり》の兄貴《あにき》だよ。それも、百とまとまった金《かね》が入用《いりよう》だという訳《わけ》じゃねえ。四|半分《はんぶん》の二十五|両《りょう》で事《こと》が済《す》むんだ」
「二十五|両《りょう》。――」
「みっともねえ。驚
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