たり》の世界《せかい》。どうぞ辛抱《しんぼう》して、話相手《はなしあいて》になっておくんなさいまし、――あたしゃ、王子《おうじ》で育《そだ》った十|年前《ねんまえ》も、お見世《みせ》へ通《かよ》うきょうこの頃《ごろ》も、心《こころ》に毛筋程《けすじほど》の変《かわ》りはござんせぬ。吉《きち》ちゃんと、おせんちゃんとは夫婦《ふうふ》だと、ままごと遊《あそ》びにからかわれた、あの春《はる》の日《ひ》が忘《わす》れられず、枕《まくら》を濡《ぬ》らして泣《な》き明《あ》かした夜《よる》も、一|度《ど》や二|度《ど》ではござんせんし。おせんも年頃《としごろ》、好《す》きなお客《きゃく》の一人《ひとり》くらいはあろうかと、折節《おりふし》のお母《っか》さんの心配《しんぱい》も、あたしの耳《みみ》には上《うわ》の空《そら》。火《ひ》あぶりで死《し》んだお七が羨《うらや》ましいと、あたしゃいつも、思《おもい》い続《つづ》けてまいりました。――太夫《たゆう》、お前《まえ》は、立派《りっぱ》なお上《かみ》さんのその外《ほか》に、二つも寮《りょう》をお持《も》ちの様子《ようす》。引《ひ》くてあまたの、御贔屓
前へ
次へ
全263ページ中187ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
邦枝 完二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング