には、情《なさけ》の露《つゆ》さえ仇《あだ》に宿《やど》って、思《おも》いなしか、声《こえ》は一|途《ず》にふるえていた。
「――朝《あさ》から晩《ばん》まで、いいえ、それよりも、一|生涯《しょうがい》、あたしゃ太夫《たゆう》と一|緒《しょ》にいとうござんすが、なんといっても、お前《まえ》は今《いま》を時《とき》めく、江戸《えど》一|番《ばん》の女形《おやま》。それに引《ひ》き換《か》えあたしゃそこらに履《は》き捨《す》てた、切《き》れた草鞋《わらじ》もおんなじような、水茶屋《みずぢゃや》の茶汲《ちゃく》み娘《むすめ》。百夜《ももよ》の路《みち》を通《かよ》ったとて、お前《まえ》に逢《あ》って、昔話《むかしばなし》もかなうまい。それゆえせめての心《こころ》から、あたしがいつも夢《ゆめ》に見《み》るお前《まえ》のお七を、由斎《ゆうさい》さんに仕上《しあ》げてもらって、ここまで内緒《ないしょ》で運《はこ》んだ始末《しまつ》。お前《まえ》のお宅《たく》にくらべたら、物置小屋《ものおきごや》にも足《た》りない住居《すまい》でござんすが、ここばっかりは、邪間《じゃま》する者《もの》もない二人《ふ
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