―何《な》んぞ変《かわ》わったことでもおありかえ」
「さァ、ちっとばかり。……」
「どれ、何《なに》がの。――」
 障子《しょうじ》の隙間《すきま》から、顔《かお》を半分《はんぶん》窺《のぞ》かせた母親《ははおや》を、おせんはあわてて遮《さえぎ》った。
「気《き》にする程《ほど》でもござんせぬ。あっちへ行《い》ってておくんなさい」
「ほんにまァ、ここへは来《く》るのじゃなかったッけ」
 三日前《みっかまえ》の夜《よる》の四つ頃《ごろ》、浜町《はまちょう》からの使《つか》いといって、十六七の男《おとこ》の子《こ》が、駕籠《かご》に乗《の》った女《おんな》を送《おく》って来《き》たその晩《ばん》以来《いらい》、お岸《きし》はおせんの口《くち》から、観音様《かんのんさま》への願《がん》かけゆえ、向《むこ》う三十|日《にち》の間《あいだ》何事《なにごと》があっても、四|畳半《じょうはん》へは這入《はい》っておくんなさいますな。あたしの留守《るす》にも、ここへ足《あし》を入《い》れたが最後《さいご》、お母《っか》さんの眼《め》はつぶれましょうと、きつくいわれたそれからこっち、何《なに》が何《なに
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