のあたりの暗《くら》さを幸《さいわ》いにして、鼻《はな》から先《さき》へ突出《つきだ》していた。
が、いつもなら、人《ひと》にいわれるまでもなく、まずこっちから愛嬌《あいきょう》を見《み》せるにきまっていたおせんが、きょうは何《な》んとしたのであろう。靨《えくぼ》を見《み》せないのはまだしも、まるで別人《べつじん》のようにせかせかと、先《さき》を急《いそ》いでの素気《すげ》ない素振《そぶり》に、一|同《どう》も流石《さすが》におせんの前《まえ》へ、大手《おおで》をひろげる勇気《ゆうき》もないらしく、ただ口《くち》だけを達者《たっしゃ》に動《うご》かして、少《すこ》しでも余計《よけい》に引止《ひきと》めようと、あせるばかりであった。
「もし、そこを退《ど》いておくんなさいな」
「どいたらおめえが帰《かえ》ッちまうだろう。まァいいから、ここで遊《あそ》んで行《ゆ》きねえ」
「あたしゃ、先《さき》を急《いそ》ぎます。きょうは堪忍《かんにん》しておくんなさいよ」
「先《さき》ッたって、これから先《さき》ァ、家《うち》へ帰《かえ》るより道《みち》はあるめえ。それともどこぞへ、好《す》きな人《ひ
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