、文字太夫《もじだゆう》も跣足《はだし》だて」
「それはもう御隠居様《ごいんきょさま》。滅法《めっぽう》名代《なだい》の土平《どへい》でござんす。これ程《ほど》のいい声《こえ》は、鉦《かね》と太鼓《たいこ》で探《さが》しても、滅多《めった》にあるものではござんせぬ」
「御隠居《ごいんきょ》は、土平《どへい》の声《こえ》を、始《はじ》めてお聞《き》きなすったのかい」
「左様《さよう》」
「これはまた迂濶《うかつ》千|万《ばん》。飴売《あめうり》土平《どへい》は、近頃《ちかごろ》江戸《えど》の名物《めいぶつ》でげすぜ」
「いや、噂《うわさ》はかねて聞《き》いておったが、眼《め》で見《み》たのは今《いま》が初《はじ》めて。まことにはや。面目次第《めんぼくしだい》もござりませぬて」
「はははは。お前様《まえさま》は、おなじ名代《なだい》なら、やっぱりおせんの方《ほう》が、御贔屓《ごひいき》でげしょう」
「決《けっ》して左様《さよう》な訳《わけ》では。……」
「お隠《かく》しなさいますな。それ、そのお顔《かお》に書《か》いてある」
 見物《けんぶつ》の一人《ひとり》が、近《ちか》くにいる隠居《い
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