おせん様《さま》。おはもじながらここもとは、そもじ思《おも》うて首《くび》ッたけ、烏《からす》の鳴《な》かぬ日《ひ》はあれど、そもじ見《み》ぬ日《ひ》は寝《ね》も寝《ね》つかれぬ。雪駄《せった》ちゃらちゃら横眼《よこめ》で見《み》れば、咲《さ》いた桜《さくら》か芙蓉《ふよう》の花《はな》か、さても見事《みごと》な富士《ふじ》びたえ。――さッさ買《か》いなよ買《か》わしゃんせ。土平《どへい》自慢《じまん》の人参飴《にんじんあめ》じゃ。遠慮《えんりょ》は無用《むよう》じゃ。買《か》わしゃんせ。買《か》っておせんに惚《ほ》れしゃんせ」
 手振《てぶ》りまでまじえての土平《どへい》の唄《うた》は、月《つき》の光《ひかり》が冴《さ》えるにつれて、愈《いよいよ》益々《ますます》面白《おもしろ》く、子供《こども》ばかりか、ぐるりと周囲《しゅうい》に垣《かき》を作《つく》った大方《おおかた》は、通《とお》りがかりの、大人《おとな》の見物《けんぶつ》で一|杯《ぱい》であった。
「はッはッはッ。これが噂《うわさ》の高《たか》い土平《どへい》だの。いやもう感心《かんしん》感心《かんしん》。この咽《のど》では
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