》からおもてに遁《のが》れた。
七
鏡《かがみ》のおもてに映《うつ》した眉間《みけん》に、深《ふか》い八の字《じ》を寄《よ》せたまま、ただいらいらした気持《きもち》を繰返《くりかえ》していた中村松江《なかむらしょうこう》は、ふと、格子戸《こうしど》の外《そと》に人《ひと》の訪《おとず》れた気配《けはい》を感《かん》じて、じッと耳《みみ》を澄《すま》した。
「もし、今晩《こんばん》は。――今晩《こんばん》は」
(おお、やはりうちかいな)
そう、思《おも》った松江《しょうこう》は、次《つぎ》の座敷《ざしき》まで立《た》って行《い》って、弟子《でし》のいる裏《うら》二|階《かい》へ声《こえ》をかけた。
「これ富江《とみえ》、松代《まつよ》、誰《だれ》もいぬのか。お客《きゃく》さんがおいでなされたようじゃ」
が、先刻《せんこく》新《しん》七におこのの後《あと》を追《お》わせた隙《すき》に、二人《ふたり》とも、どこぞ近所《きんじょ》へまぎれて行《い》ったのであろう。もう一|度《ど》呼《よ》んで見《み》た松江《しょうこう》の耳《みみ》には、容易《ようい》に返事《へんじ》が戻《もど
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