らぬで済《す》もうとお思《おも》いか。なぜお供《とも》をせぬのじゃ」
「そう申《もう》したのでござんすが、師匠《ししょう》はひどくお急《いそ》ぎで、行《い》く先《さき》さえ仰《おっ》しゃらねえんで。……」
「直《す》ぐに行《い》きゃ」
「へ」
「提灯《ちょうちん》を持《も》って直《す》ぐに、後《あと》を追《お》うて行《い》きゃというのじゃ」
「と仰《おっ》しゃいましても、どっちへお出《で》かけか、方角《ほうがく》も判《わか》りゃァいたしやせん」
「まだ出《で》たばかりじゃ。そこまで行《い》けば直《す》ぐに判《わか》ろう。たじろいでいる時《とき》ではない。速《はよ》う。速《はよ》う」
 この上《うえ》躊躇《ちょうちょ》していたら、持《も》った煙管《きせる》で、頭《あたま》のひとつも張《は》られまじき気配《けはい》となっては、藤吉《とうきち》も、立《た》たない訳《わけ》には行《い》かなかった。
 提灯《ちょうちん》は提灯《ちょうちん》、蝋燭《ろうそく》は蝋燭《ろうそく》と、右《みぎ》と左《ひだり》に別々《べつべつ》につかんだ藤吉《とうきち》は、追《お》われるように、梶女《かじじょ》の眼《め
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