をつかんだ新《しん》七には、もはや主従《しゅじゅう》の見《み》さかいもなくなっていたのであろう。たとえ何《な》んであろうと、引《ひき》ずっても連《つ》れて行《い》かねばならぬという、強《つよ》い意地《いじ》が手伝《てつだ》って、荒々《あらあら》しく肩《かた》に手《て》をかけた。
「これ、新《しん》七、何《なに》をしやる」
「何《なに》もかもござりませぬ。あの帯《おび》は、太夫《たゆう》が今度《こんど》の芝居《しばい》にはなくてはならない大事《だいじ》な衣装《いしょう》、手前《てまえ》がひとりで行《い》ったとて、春信《はるのぶ》さんは渡《わた》しておくんなさいますまい。どうでもお前様《まえさま》を一|緒《しょ》に連《つ》れて。――」
「ええ、行《い》かぬ。何《な》んというてもわしゃ行《い》かぬ」
 星《ほし》のみ光《ひか》った空《そら》の下《した》に、二つのかたちは、犬《いぬ》の如《ごと》くに絡《から》み合《あ》っていた。
「ふふふふ。みっともねえ。こんなことであろうと思《おも》って、後《あと》をつけて来《き》たんだが、お上《かみ》さん、こいつァ太夫《たゆう》さんの辱《はじ》ンなるぜ」

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