という、鷺娘《さぎむすめ》の絵《え》のことじゃ。――ええからそこを退《の》きなされ」
「いいや、それはなりません。お上《かみ》さんは、確《たしか》に持《も》ってお出《いで》なされたはず。もう一|度《ど》手前《てまえ》と一|緒《しょ》に、白壁町《しろかべちょう》のお宅《たく》へ、お戻《もど》りなすって下《くだ》さりませ」
「なにいうてんのや。わたしが戻《もど》ったとて、知《し》らぬものが、あろうはずがあるかいな。――こうしてはいられぬのじゃ。そこ退《の》きやいの」
 おこのが払《はら》った手《て》のはずみが、ふと肩《かた》から滑《すべ》ったのであろう。袂《たもと》を放《はな》したその途端《とたん》に、新《しん》七はいやという程《ほど》、おこのに頬《ほほ》を打《う》たれていた。
「あッ。お打《う》ちなさいましたな」
「打《う》ったのではない。お前《まえ》が、わたしの手《て》を取《と》りやはって。……」
「ええ、もう辛抱《しんぼう》がなりませぬ。手前《てまえ》と一|緒《しょ》にもう一|度《ど》、春信《はるのぶ》さんのお宅《たく》まで、とっととおいでなさりませ」
 ぐっとおこのの手首《てくび》
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