《えし》の春信《はるのぶ》さんのお宅《たく》へ、いって来《き》ました」
「そんならやっぱり、春信師匠《はるのぶししょう》のお宅《たく》へ」
「お前《まえ》がまた、そのようなことを訊《き》いて、何《な》んにしやはる」
「手前《てまえ》は太夫《たゆう》からのおいいつけで、お上《かみ》さんをお迎《むか》えに上《あが》ったのでござります」
「わたしを迎《むか》えに。――」
「へえ。――そうしてあの帯《おび》をどうなされました」
「何《なに》、帯《おび》とえ」
「はい。おせんさんの帯《おび》は、お上《かみ》さんが、お持《も》ちなされたのでござりましょう」
「そのような物《もの》を、わたしが知《し》ろかいな」
「いいえ。知《し》らぬことはございますまい。先程《さきほど》お出《で》かけなさる時《とき》、帯《おび》を何《な》んとやら仰《おっ》しゃったのを、新《しん》七は、たしかにこの耳《みみ》で聞《き》きました」
「知《し》らぬ知《し》らぬ。わたしが春信《はるのぶ》さんをお訊《たず》ねしたのは帯《おび》や衣装《いしょう》のことではない。今度《こんど》鶴仙堂《かくせんどう》から板《いた》おろしをしやはる
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