いや》の男衆《おとこしゅう》新《しん》七は、これもおこのと同《おな》じように、柳原《やなぎはら》の土手《どて》を八|辻《つじ》ヶ|原《はら》へと急《いそ》いだが、夢中《むちゅう》になって走《はし》り続《つづ》けてきたせいであろう。右《みぎ》へ行《い》く白壁町《しろかべちょう》への道《みち》を左《ひだり》へ折《お》れたために、狐《きつね》につままれでもしたように、方角《ほうがく》さえも判《わか》らなくなった折《おり》も折《おり》、彼方《かなた》の本多豊前邸《ほんだぶぜんてい》の練塀《ねりべい》の影《かげ》から、ひた走《はし》りに走《はし》ってくる女《おんな》の気配《けはい》。まさかと思《おも》って眼《め》をすえた刹那《せつな》瞼《まぶた》ににじんだ髪《かみ》かたちは、正《まさ》しくおこのの姿《すがた》だった。
新《しん》七は、はッとして飛《と》び上《あが》った。
「おお、お上《かみ》さん」
「あッ。お前《まえ》はどこへ」
「どこへどころじゃござりません。お上《かみ》さんこそ今時分《いまじぶん》、どちらへおいでなさいました」
「わたしは、お前《まえ》も知《し》っての通《とお》り、あの絵師
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