ひろ》いようでも世間《せけん》は狭《せめ》えものだ。どうか真《ま》ッ直《すぐ》向《む》いて歩《ある》いておくんなせえ」
「あんたはん、どなたや」
「あっしゃァ松《まつ》五|郎《ろう》という、けちな職人《しょくにん》でげすがね。お前《まえ》さんの仕方《しかた》が、あんまり情《なさけ》な過《す》ぎるから、口《くち》をはさましてもらったのさ。知《し》らなきゃいって聞《き》かせるが、笠森《かさもり》のおせん坊《ぼう》は、男嫌《おとこぎら》いで通《とお》っているんだ。今《いま》さらお前《まえ》さんとこの太夫《たゆう》が、金鋲《きんびょう》を打《う》った駕籠《かご》で迎《むか》えに来《き》ようが、毛筋《けすじ》一|本《ぽん》動《うご》かすような女《おんな》じゃねえから安心《あんしん》しておいでなせえ。痴話喧嘩《ちわげんか》のとばっちりがここまでくるんじゃ、師匠《ししょう》も飛《と》んだ迷惑《めいわく》だぜ」
 松《まつ》五|郎《ろう》はこういって、ぐっとおこのを睨《にら》みつけた。

    五

 暗《やみ》の中《なか》を、鼠《ねずみ》のようになって、まっしぐらに駆《か》けて来《き》た堺屋《さか
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