もなく、本読《ほんよ》みも済《す》んで、愈《いよいよ》稽古《けいこ》にかかった四五|日《にち》は、寝《ね》る間《ま》をつめても、次《つぎ》の間《ま》に控《ひか》えて、茶《ちゃ》よ菓子《かし》よと、女房《にょうぼう》の勤《つと》めに、さらさら手落《ておち》はなく過《す》ぎたのであったが、さて稽古《けいこ》が積《つ》んで、おのれの工夫《くふう》が真剣《しんけん》になる時分《じぶん》から、ふと眼《め》についたのは、良人《おっと》の居間《いま》に大事《だいじ》にたたんで置《お》いてある、もみじを散《ち》らした一|本《ぽん》の女帯《おんなおび》だった。
買《か》った衣装《いしょう》というのなら、誰《だれ》に見《み》しょうとて、別《べつ》に邪間《じゃま》になるまいと思《おも》われる、その帯《おび》だけに殊更《ことさら》に、夜寝《よるね》る時《とき》まで枕許《まくらもと》へ引《ひ》き付《つけ》ての愛着《あいちゃく》は、並大抵《なみたいてい》のことではないと、疑《うたが》うともなく疑《うたが》ったのが、事《こと》の始《はじ》まりというのであろうか。おこのが昼《ひる》といわず夜といわず、ひそかに睨《に
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