ちか》い薬種問屋《やくしゅどんや》「小西《こにし》」の娘《むすめ》と生《う》まれて、何《なに》ひとつ不自由《ふじゆう》も知《し》らず、我《わが》まま勝手《かって》に育《そだ》てられて来《き》たおこのは、たとい役者《やくしゃ》の女房《にょうぼう》には不向《ふむき》にしろ、品《ひん》なら縹緻《きりょう》なら、人《ひと》には引《ひ》けは取《と》らないとの、固《かた》い己惚《うぬぼれ》があったのであろう。仮令《たとえ》江戸《えど》に幾《いく》千の女《おんな》がいようともうち[#「うち」に傍点]の太夫《たゆう》にばかりは、足《あし》の先《さき》へも触《ふ》らせることではないと、三|年前《ねんまえ》に婚礼早々《こんれいそうそう》大阪《おおさか》を発《た》って来《き》た時《とき》から、肚《はら》の底《そこ》には、梃《てこ》でも動《うご》かぬ強《つよ》い心《こころ》がきまっていた。
この秋《あき》の狂言《きょうげん》に、良人《おっと》が選《えら》んだ「おせん」の芝居《しばい》を、重助《じゅうすけ》さんが書《か》きおろすという。もとよりそれには、連《つ》れ添《そ》う身《み》の異存《いぞん》のあろうはず
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