ら》んだとどのつまりは、独《ひと》り四|畳半《じょうはん》に立籠《たてこ》もって、おせんの型《かた》にうき身《み》をやつす、良人《おっと》の胸《むね》に巻《ま》きつけた帯《おび》が、春信《はるのぶ》えがくところの、おせんの大事《だいじ》な持物《もちもの》だった。
 カッとなって、持《も》ち出《だ》したのではもとよりなく、きのうもきょうもと、二日二晩《ふつかふたばん》考《かんが》え抜《ぬ》いた揚句《あげく》の果《は》てが、隣座敷《となりざしき》で茶《ちゃ》を入《い》れていると見《み》せての、雲隠《くもがくれ》れが順《じゅん》よく運《はこ》んで、大通《おおどお》りへ出《で》て、駕籠《かご》を拾《ひろ》うまでの段取《だんどり》りは、誰一人《だれひとり》知《し》る者《もの》もなかろうと思《おも》ったのが、手落《ておち》といえばいえようが、それにしても、新《しん》七が後《あと》を追《お》って来《き》ようなぞとは、まったく夢《ゆめ》にも想《おも》わなかった。
「駕籠屋《かごや》さん。済《す》まんが、急《いそ》いどくれやすえ」
「へいへい、合点《がってん》でげす。月《つき》はなくとも星明《ほしあか》
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