押《おさ》えたまま、ぺこりと頭《あたま》をさげたのは、女房《にょうぼう》のおこのではなくて、男衆《おとこしゅう》の新《しん》七だった。
「新《しん》七かいな」
「へえ」
「おこのは何《なに》をしてじゃ」
「さァ」
「何《なん》としたぞえ」
「お上《かみ》さんは、もう一|時《とき》も前《まえ》にお出《で》かけなすって、お留守《るす》でござります」
「留守《るす》やと」
「へえ」
「どこへ行《い》った」
「白壁町《しろかべちょう》の、春信《はるのぶ》さんのお宅《たく》へ行《い》くとか仰《おっ》しゃいまして、――」
「何《な》んじゃと。春信《はるのぶ》さんのお宅《たく》へ行《い》った。そりゃ新《しん》七、ほんまかいな」
「ほんまでござります」
「おこのがまた、白壁町《しろかべちょう》さんへ、どのような用事《ようじ》で行《い》ったのじゃ。早《はよ》う聞《き》かせ」
「御用《ごよう》の筋《すじ》は存《ぞん》じませぬが、帯《おび》をどうとやらすると、いっておいででござりました」
「帯《おび》。新《しん》七。――そこの箪笥《たんす》をあけて見《み》や」
あわてて箪笥《たんす》の抽斗《ひきだし》へ手
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