《て》をかけた新《しん》七は、松江《しょうこう》のいいつけ通《どお》り、片《かた》ッ端《ぱし》から抽斗《ひきだし》を開《あ》け始《はじ》めた。
「着物《きもの》も羽織《はおり》も、みなそこへ出《だ》して見《み》や」
「こうでござりますか」
「もっと」
「これも」
「ええもういちいち聞《き》くことかいな。一|度《ど》にあけてしまいなはれ」
ぎっしり、抽斗《ひきだし》一|杯《ぱい》に詰《つま》った衣装《いしょう》を、一|枚《まい》残《のこ》らず畳《たたみ》の上《うえ》へぶちまけたその中《なか》を、松江《しょうこう》は夢中《むちゅう》で引《ひ》ッかき廻《まわ》していたが、やがて眼《め》を据《す》えながら新《しん》七に命《めい》じた。
「おまえ、直《す》ぐに白壁町《しろかべちょう》へ、おこのの後《あと》を追《お》うて、帯《おび》を取《と》って戻《もど》るのじゃ」
「何《な》んの帯《おび》でござります」
「阿呆《あほう》め、おせんの帯《おび》じゃ。あれがのうては、肝腎《かんじん》の芝居《しばい》がわや[#「わや」に傍点]になってしまうがな」
剃《そ》りたての松江《しょうこう》の眉《まゆ》は、
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