のまま付《つ》けて、すっきりたたずんだ中村松江《なかむらしょうこう》の頬《ほほ》は、火桶《ひおけ》のほてりに上気《じょうき》したのであろう。たべ酔《よ》ってでもいるかと思《おも》われるまでに赤《あか》かった。
「おこの。――これ、おこの」
 鏡《かがみ》のおもてにうつしたおのが姿《すがた》を見詰《みつ》めたまま、松江《しょうこう》は隣座敷《となりざしき》にいるはずの、女房《にょうぼう》を呼《よ》んで見《み》た。が、いずこへ行《い》ったのやら、直《す》ぐに返事《へんじ》は聞《き》かれなかった。
「ふふ、居《お》らんと見《み》えるの。このようによう映《うつ》る格好《かっこう》を、見《み》せようとおもとるに。――」
 松江《しょうこう》はそういいながら、きゃしゃな身体《からだ》をひねって、踊《おどり》のようなかたちをしながら、再《ふたた》び鏡《かがみ》のおもてに呼《よ》びかけた。
「おせんが茶《ちゃ》をくむ格好《かっこう》じゃ、早《はよ》う見《み》に来《き》たがいい」
「もし、太夫《たゆう》」
 暖簾《のれん》の下《した》にうずくまって、髷《まげ》の刷毛先《はけさき》を、ちょいと指《ゆび》で
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