》かせてもらいましょう」
が、松《まつ》五|郎《ろう》はわざと頬《ほほ》をふくらまして、鼻《はな》の穴《あな》を天井《てんじょう》へ向《む》けた。
帯《おび》
一
祇園守《ぎおんまもり》の定紋《じょうもん》を、鶯茶《うぐいすちゃ》に染《そ》め抜《ぬ》いた三|尺《じゃく》の暖簾《のれん》から、ちらりと見《み》える四|畳半《じょうはん》。床《とこ》の間《ま》に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《さ》した秋海棠《しゅうかいどう》が、伊満里《いまり》の花瓶《かびん》に影《かげ》を映《うつ》した姿《すがた》もなまめかしく、行燈《あんどん》の焔《ほのお》が香《こう》のように立昇《たちのぼ》って、部屋《へや》の中程《なかほど》に立《た》てた鏡台《きょうだい》に、鬘下地《かつらしたじ》の人影《ひとかげ》がおぼろであった。
所《ところ》は石町《こくちょう》の鐘撞堂新道《かねつきどうしんみち》。白紙《はくし》の上《うえ》に、ぽつんと一|点《てん》、桃色《ももいろ》の絵《え》の具《ぐ》を垂《た》らしたように、芝居《しばい》の衣装《いしょう》をそ
前へ
次へ
全263ページ中137ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
邦枝 完二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング