独《ひと》り言《ごと》をいって顎《あご》を突出《つきだ》した松《まつ》五|郎《ろう》の顔《かお》は、道化方《どうけかた》の松島茂平次《まつしまもへいじ》をそのままであった。
八
行水《ぎょうずい》でもつかうように、股《もも》の付根《つけね》まで洗《あら》った松《まつ》五|郎《ろう》が、北向《きたむき》の裏《うら》二|階《かい》にそぼ降《ふ》る雨《あめ》の音《おと》を聞《き》きながら、徳太郎《とくたろう》と対座《たいざ》していたのは、それから間《ま》もない後《あと》だった。瓦《かわら》のおもてに、あとからあとから吸《す》い込《こ》まれて行《い》く秋雨《あきさめ》の、時《とき》おり、隣《となり》の家《いえ》から飛《と》んで来《き》た柳《やなぎ》の落葉《おちば》を、貼《は》り付《つ》けるように濡《ぬ》らして消《き》えるのが、何《なに》か近頃《ちかごろ》はやり始《はじ》めた飛絣《とびがすり》のように眼《め》に映《うつ》った。
銀煙管《ぎんぎせる》を握《にぎ》った徳太郎《とくたろう》の手《て》は、火鉢《ひばち》の枠《わく》に釘着《くぎづ》けにされたように、固《かた》くなって動
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