合羽《かっぱ》をむしり取《と》っていた。
「へい、これは若旦那《わかだんな》、お早《はや》いお帰《かえ》りでございます」
 番頭《ばんとう》の幸兵衛《こうべえ》は、帳付《ちょうづけ》の筆《ふで》を投《な》げ出《だ》して、あわてて暖簾口《のれんぐち》へ顔《かお》を出《だ》したが、ひと目《め》徳太郎《とくたろう》の姿《すがた》を見《み》るとてっきり、途中《とちゅう》で喧嘩《けんか》でもして来《き》たものと、思《おも》い込《こ》んでしまったのであろう。頭《あたま》のてッ辺《ぺん》から足《あし》の爪先《つまさき》まで、見上《みあ》げ見《み》おろしながら、言葉《ことば》を吃《ども》らせた。
「ど、どうなすったのでございます」
「番頭《ばんとう》さん、市松《いちまつ》に直《す》ぐ暇《ひま》をだしとくれ」
「市松《いちまつ》が、な、なにか、粗相《そそう》をいたしましたか」
「何《な》んでもいいから、あたしのいった通《とお》りにしておくれ。あたしゃきょうくらい、恥《はじ》をかいたこたァありゃしない。もう口惜《くや》しくッて、口惜《くや》しくッて。……」
「そ、それはまたどんなことでございます。小僧《こ
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