こそ災難《さいなん》だ。何《な》んにも知《し》らずにお供《とも》に来《き》て、おせんに遭《あ》ったばっかりに、大事《だいじ》な奉公《ほうこう》をしくじるなんざ、辻占《つじうらない》の文句《もんく》にしても悪過《わるす》ぎやさァね。堪忍《かんにん》してやっとくんなさい。――こう市《いち》どん。おめえもしっかり、若旦那《わかだんな》にあやまんねえ」
「若旦那《わかだんな》、どうか御勘弁《ごかんべん》なすっておくんなさいまし」
「いやだよ。お前《まえ》は、もう家《うち》の奉公人《ほうこうにん》でもなけりゃ、あたしの供《とも》でもないんだから、ちっとも速《はや》くあたしの眼《め》の届《とど》かないとこへ消《き》えちまうがいい」
「消《け》えろとおっしゃいましても。……」
「判《わか》らずやめ。泥《どろ》の中《なか》へでも何《な》んでも、勝手《かって》にもぐって失《う》せるんだ」
「へえ」
尻《しり》ッ端折《ぱしょ》りの尾※[#「骨+低のつくり」、第3水準1−94−21]骨《かめのお》のあたりまで、高々《たかだか》と汚泥《はね》を揚《あ》げた市松《いちまつ》の、猫背《ねこぜ》の背中《せなか》へ
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