ぴく動《うご》いていた。
「市公《いちこう》」
思《おも》いがけない出来事《できごと》に、茫然《ぼうぜん》としていた小僧《こぞう》の市松《いちまつ》が、ぺこりと下《さ》げた頭《あたま》の上《うえ》で、若旦那《わかだんな》の声《こえ》はきりぎりすのようにふるえた。
「馬鹿野郎《ばかやろう》」
「へえ」
「なぜおせんを捕《つか》まえないんだ」
「お放《はな》しなすったのは、若旦那《わかだんな》でございます」
「ええうるさい。たとえあたしが放《はな》しても、捕《つか》まえるのはお前《まえ》の役目《やくめ》だ。――もうお前《まえ》なんぞに用《よう》はない。今《いま》すぐここで暇《ひま》をやるから、どこへでも行《い》っておしまい」
「ははは。若旦那《わかだんな》」と、松《まつ》五|郎《ろう》が口《くち》をはさんだ。「そいつァちと責《せ》めが強過《つよす》ぎやしょう。小僧《こぞう》さんに罪《つみ》はねえんで。みんなあなたの我《わが》ままからじゃござんせんか」
「松《まつ》つぁん、お前《まえ》なんぞの出《で》る幕《まく》じゃないよ。黙《だま》ってておくれ」
「そうでもござんしょうが、市《いち》どん
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